社会福祉法人飛騨慈光会は長く飛騨地域において障がい者福祉・児童福祉を担当し、特に入所施設を運営することで、在宅生活が困難な重い障がいを持った方々の生活の場を充実させてきました。
その取り組みは「飛騨福祉圏構想」として長期にわたり法人の指針となり、施設の適正配置・機能分化・居住環境の向上が図られてきましたが、2006(平成18)年の夕陽ヶ丘大規模修繕をもって一応の完成を見ました。
その後、支援費制度施行(2003(平成15)年)から障害者自立支援法(2006(平成18)年)を経て、地域にNPO等により多くの福祉事業所が開設され、相談支援事業を軸とした支援のネットワークが構築されています。飛騨慈光会はそうしたネットワークを構成する一事業所ではなく、文字通り地域の中核的・基幹的事業者としての機能と役割を果たさなければなりません。
50余年の歴史の中で蓄積された入所施設としての機能と職員の専門性は、現在も地域の重要な資源として期待されていますが、今後はその機能と専門性を在宅生活を望む人たちも含め、地域全体に還元することが求められています。
「飛騨福祉圏構想」の到達点と、障がい者総合支援法施行以来の福祉を巡る情勢を踏まえ、2012(平成24)年度を起点とする第五期(2020(平成32)年度を終点)の中長期計画を策定し、その中において飛騨慈光会が実施する事業ビジョンの骨子を以下にまとめてみました。
・三障がいに加え、発達障がい、高次脳機能障害、難病など様々な障がいに対して、飛騨慈光会が有する資源の提供や、他事業所との連携による適正なサービスの調整を行います。
・在宅生活が困難な方の生活の場として、入所施設の機能と環境を常に検証しながら高めていきます。
・社会的養護を必要とする児童の変化(DV被害・発達障がい・親の経済的困窮や養育能力欠如等)に対応した支援の質の向上を図ります。
・乳幼児から高齢者まで、障がい者のライフステージに渡って、支援の提供や相談に対して適切な助言が行えるようにします。
・相談支援事業を軸とした地域連携(ネットワーク構築)を強化します。
・様々な障がい、各ライフステージに対応できる相談支援体制を構築します。
・地域の支援ネットワークにおける基幹的総合的な事業所としての機能と体制を作ります。
・老朽化した高山山ゆり園及び清和寮の改築を行います。
・特に、高山山ゆり園の改築は、新たな生活の場の創造であり、グループホームなどの居住形態を今以上に拡大する取り組みと同時並行的に進めます。
・児童養護施設夕陽ヶ丘が子どもの成長や家庭的な生活に適した居住環境であるか常に検証し改善します。
・高齢化が進む障がい者が安心して生活できる場を保障します。
・障がい者の豊かな老後を支援します。
・障がい者福祉を担う人材を恒常的に確保育成するとともに、地域の雇用に貢献します。
・キャリアパスを整備し、研修を充実させ、職員のモチベーションを高めます。
・職員の労働条件、労働環境を常に検証し、働きやすい職場づくりに努めます。
・女性が出産後も子育てしながら安心して働ける職場を作ります。そのために、職場内託児所の検討を行います。
時期区分 |
年次 |
飛騨慈光会の事業 |
法人事業の重点 |
福祉の動向・制度 |
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草創期 | 1955(昭和30)年 |
児童養護施設「飛騨慈光園」開設 | 飛騨における福祉のスタートと飛騨慈光会の発足 | ◎児童福祉法(1947)社会福祉法施行(1951)児童憲章(1951) ※社会福祉法人が定義される。 ◎障がい児・者を持つ親による施設開設運動が各地に起きる。 ◎精神薄弱者福祉法施行(1960) |
1956(31)年 |
社会福祉法人飛騨慈光会発足 | |||
1961(36)年 |
障害児施設開設運動の始まり(山ゆり会) | |||
第一期 | 1967(42)年 |
知的障害児施設「山ゆり学園」開設 | 障がい児・者施設の開設 ・住民の願いが「山ゆり学園」として結実 ・重度障がい児者への対応強化 ・成人施設開設 |
◎コロニー型施設各地に開設 ※「隔離収容」の時代 ◎障害者当事者による運動の発生 ※入所施設批判と自立生活の希求 |
1968(43)年 |
飛騨慈光会協力会費始まる | |||
1969(44)年 |
重度棟新築 | |||
1977(52)年 |
「第二山ゆり学園」開設 | |||
第ニ期 | 1982(57)年 |
福祉ホーム開設 | 「飛騨福祉圏構想」のスタートと展開 ・ブランチシステムに基づく施設の適正配置(小規模地域分散) ・作業の提供と働く場(福祉的就労)の創設 ・地域支援事業のスタート |
◎養護学校義務化(1979) ◎国際児童年 ◎国際障害者年(1981) ※ノーマライゼーション思想の普及 ※施設も指導訓練の場から生活の場へ ◎児童の権利条約批准・エンゼルプラン ◎地域移行の奨励(厚生省浅野課長) |
1986(61)年 |
「山ゆり福祉農場」開設 | |||
1986(61)年 |
知的障害者更生施設「益田山ゆり園」開設 | |||
1989(平成元)年 |
県下初のグループホーム設置 | |||
1991(3)年 |
知的障害者授産施設「吉城山ゆり園」開設 | |||
1993(5)年 |
慈光園運営の見直し(給与体系統一など) | |||
1996(8)年 |
「山ゆり地域生活支援センター」開設 | |||
1996(8)年 |
高山市より清和寮委託受ける | |||
1997(9)年 |
知的障害者更生施設「大野山ゆり園」開設 | |||
第三期 | 1998(10)年 |
飛騨慈光園を「夕陽ヶ丘」に改称 | 「飛騨福祉圏」の完成 ・利用者の暮らしの場を充実(居室の個室化促進) ・医療依存度の高い障害者支援(診療所併設) ・後援会の発足(2006) |
◎社会福祉基礎構造改革のスタート ※措置から契約へ ◎グループホーム制度化(1998) ◎介護保険制度施行(2000) ◎児童虐待防止法(2000) ◎DV防止法(2001) ◎児童の権利条約批准・エンゼルプラン ◎支援費制度施行(2003) ◎市町村合併(高山市2005・下呂市2004・飛騨市2004) ◎障害者自立支援法施行・三障がい一元化(2006) |
2001(13)年 |
吉城山ゆり園古川分場開設 | |||
2001(13)年 |
「身体障害者療護施設飛騨うりす苑」開設 | |||
2002(14)年 |
山ゆり学園全面改築 | |||
2003(15)年 |
「益田生活サポートセンター」開設 | |||
2006(18)年 |
「夕陽ヶ丘」大規模修繕 | |||
第四期 | 2006(18)年 |
コンサルタント契約・顧問弁護士契約 | 法人組織の強化(激変する福祉への対応) ・労務制度、法人組織の改革、経営基盤確立 ・相談支援事業の展開(三障がいに対応) ・就労支援の強化 |
◎障がい者制度改革推進本部設置 ◎自立支援法違憲訴訟和解 ◎社会的養護専門委員会とりまとめ(2011) ※児童養護施設の小規模化・高機能化・地域分散 |
2009(21)年 |
高山山ゆり園・大野山ゆり園新体系移行 | |||
2011(23)年 |
総合支援センター「ぷりずむ」開設 | |||
第五期 | 2012(24)年 |
飛騨うりす苑・吉城山ゆり園・益田山ゆり園が新体系移行(全施設の移行完了) | 地域の中核的・基幹的事業者として ・三障がい、全ライフステージに対応した支援体制 ・地域支援事業の充実と地域連携の強化 ・老朽化した施設の改築と新たな暮らしの場の創造 ・高齢化への対応 ・人材の育成確保と働きやすい職場の創造 |
◎障がい者虐待防止法(2012年10月) ◎障がい者総合支援法施行(2013年4月) |
2012(24)年 |
就労移行支援事業開始 高山山ゆり園改築(予定) 清和寮改築(予定) グループホーム・ケアホームの新設 職場内保育所設置 |
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2020(32)年 |
第五期中長期計画の終了 |